鉄筋の継手

こんにちは!カン太郎です!
今回は鉄筋の継手について、僕が今まで経験したものを写真付きでまとめていきます。それぞれメリット・デメリットも触れていきますのでよろしくお願いします。

継手とは?

はじめに、継手とはなんのこっちゃか分からない方に軽く説明します。

鉄筋コンクリート造の躯体内部は何本もの鉄筋が入っています。
その鉄筋はそれぞれ1本の鉄筋がずーっと通っているわけではありません。当たり前ですが、数十mの高さや幅を1本ものの鉄筋で行うことは不可能です。確か工場で作れるマックスが10mだった気が、、、。

まあとにかく1本では無理なので、鉄筋を通すためにつなぐ作業が出てきます。それを継手といいます。ここまで伝えられたので続いてその継手について触れていきます。

重ね継手

細径のものでよく使われる手法です。D16までの鉄筋の継手はほぼすべてこれといって良いと思います。

名前の通り2本の鉄筋を束ねて継いだのが重ね継手です。図にあるL1というのは重ね継手の重ね長さを指しています。
少しでも重なってればオッケーというわけないですよね。L1がいくつなのかというと、打設するコンクリートの強度によって変わってくるのですが、40dと覚えておけば問題ありません。(dは鉄筋径です。)

厳密にいうとコンクリート強度が上がると継手長さが短くなります。なので最大の40dを頭に入れておいて配筋検査を行い短ければ構造図を確認するという流れでよいと思います。

鉄筋屋さんもコンクリート強度とかいちいち確認するのが面倒で、40dで拾っていることがほとんどです。


先ほど言った継手長さは構造図の下写真のようなところです。どの構造図にもある最初の構造標準図に載っています。
構造図に触れる機会がある方は見てみてください。

機械式継手

筒状の鋳物に両側から鉄筋を差し込み、筒の中にグラウト材などの注入液を入れて硬化させることで鉄筋を継ぐ方法です。


僕の経験では注入液にエポキシと呼ばれる樹脂や無収縮モルタルを定量の水で練ったグラウトを使用していました。
樹脂やモルタルの練り混ぜや注入はメーカーの講習を受けた技能者しか行うことができません。

管理者も技能講習が必要になるので、使用する際は講習のスケジュールについてもメーカー担当者と施工会社職長と調整しておいた方がよいです。

以下、施工時の写真を用いて説明してきます。

継手に使用する材料です。結構ごついですよね。これが結構高くて、、、時期にもよると思うんですが、僕が見積もりもらった時は、1本5000円ぐらいでした。柱の鉄筋は15本から25本ぐらいのことが多いので、仮に20本だとして、その柱が16本あったとすると、

5000円×20本(鉄筋)×16本=1600,000円

鉄筋の継手だけで160万円もかかります。びっくりしますよね。僕はこれで大層なミスをするのですが、それは最後にお話ししたいと思います。

継手の両端に鉄筋を差し込んでいきます。継手の鋳物についているボルトを締めて仮固定します。

注入液を作っていきます。この施工では、モルタルと水を混ぜたグラウト材を注入液としています。

注入しています。鋳物の上にある小さい白い穴からグラウトが出てきたらグラウトの充填完了確認になります。

施工後に注入忘れがないかチェックを行います。マーカーでチェック出来たものに目印をつけていきます。

現場によっては協力会社にもマーカーを持たせてダブルチェックを行います。注入忘れは構造的にも命取りになるので厳重な管理が必要です。

圧接継手

鉄筋に圧力をかけて押し付けながら加熱、溶接していく手法です。
僕の経験では基礎梁、柱で使いました。施工時の写真を見ていきましょう。

圧接、及び次に説明する溶接もそうですが、施工前は必ず断面をきれいにします。
上写真のように切断やサンダー掛けすることで断面の不純物を除去しておきます。そうしないと接合時の強度が低下し、のちの検査でも不合格となる恐れがあります。必ず確認してください。

圧接用の治具を取り付けます。

接合部に熱を加えていきます。圧接治具に圧力を加えながら接合していきます。

圧接が完了しました。ここまで説明しに使ってきた写真はA級ガス圧接といって鉄筋の継手位置を揃えてよい方法で施工前試験が必要になります。通常、圧接は左下写真のように隣り合う鉄筋と400mmずらしての施工になります。以前の現場の写真があったので載せておきます。

圧接後は第三者による検査が必要になります。写真は超音波により溶接内部に欠陥がないかを確認しています。
超音波、外観によって異常が見つかれば再施工になります。

僕の経験では再施工という形で苦労した記憶はないですが、雨や風の強い日に無理に施工を行うと起こりやすいみたいです。

エンクローズ溶接継手

つなぐ鉄筋の隙間に溶かした金属を流し込み両端の鉄筋と一体化させることで継手を行う方法です。
地上の梁を施工する際に使用したことがあります。以下施工時の写真になります。

つなぐ鉄筋に治具を取り付けます。エンクローズ溶接は圧接のように圧力こそ加えませんが、鉄筋の固定と溶かした金属と鉄筋のうけが必要になります。これも施工前に断面のチェックを忘れないようにしてください。

溶接状況です。先端から金属の線が出てくるのでそれを熱して溶接を行います。写真左上が金属線の材料です。

こちらもA級の施工になりますので、溶接位置はそろっていても問題ありません。

圧接と同様に第三者によって検査してもらいます。規定の数値の違いこそありますが、超音波と外観の検査でやってることはほぼ同じです。(少なくとも僕の目にはそう見える。。)

どこでどの継手を使うのかは構造図に書いてあります!

こんな感じで

⚫️が指定された継手ですね。鉄筋径や施工部位によっても変わるのが分かります。

まとめ

継手と言ってもさまざまな種類がありました。それぞれにメリットデメリットがあり、その場に適した継手を選ぶことがその後の施工にも影響することを考えるとその重要性が分かりますね。ということで、今回は継手についてのお話を僕の経験ベースで話させてもらいました。

おまけ

最後に僕の失敗談を一つ。
前の現場で梁主筋が機械式継手だったのですが、施工性の理由でエンクローズ溶接継手を監理者に質疑であげていました。

ただ、監理者がエンクローズ溶接を渋っていて、機械式継手のまま2階の梁の施工まで終えていました。
鉄筋屋さんからは都度エンクローズ溶接を希望していたため、何度か内容を少しずつ変えて質疑をあげていたところ3回目で許可が降りてしまいました。施工的には良かったのですが、既に頼んでいた200本以上の機械式継手用の鋳物が余ってしまいました。

一部は上の階で転用ができたのですが、今でも忘れません132本の鋳物が資材ヤードに置き去りにされました。なぜそんなに正確に覚えているのかというと、実はこのミス、竣工間際までバレてなかったんです。余った鋳物は早急にスクラップ回収を手配し、所長にバレる前に隠蔽を図っており、それがうまくいってました。

最後に施工の出来高と発注の記録が異なっていたことでこの失敗が発覚してしまったのです。エンクローズ溶接の許可のタイミングもあった為、大目玉とまではいきませんでしたがしっかりお説教をいただきました。発注は早ければ良いってもんじゃないね。そして何事も隠すのは良くないですね。というお話でした。

それではまた!

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